SL2フォーラム
ドイツに学ぶ 地域からのエネルギー転換
2022年5月28日(土) 15:00~17:10
今年3月に公開された、ドイツの「再生可能エネルギー法」改正案には、電力供給を2035年以降ほぼ100%再生可能エネルギーによって賄うことを目指す方針が示されました。ロシアからのエネルギー輸入依存度を下げるためにも、再エネの拡大が重要で、安全保障のためにも最優先の公益であるとされています。
本フォーラムでは、ドイツの再生可能エネルギーの取組みについて学び、滋賀県が進める「CO₂ネットゼロ社会づくり」について、若者を交えて考察しました。
※このフォーラムは、終了しました。
■日 時:2022年5月28日(土)15:00~17:10
※オンライン開催(Zoom利用)
■主 催:しがローカルSDGs研究会(SL2)
■参加費:無料
■参加者:59人
県外からも多数の方にご参加いただき、成功裏に終了いたしました。
<プログラム>
・開会挨拶
・基調講演「ドイツの再エネ政策と、滋賀県の取り組みへの提案」
ラウパッハ スミヤ ヨークさん(立命館大学経営学部国際経営学科教授)
・報告「若者が望むサステナブルな社会とは」
玉崎 蕗さん(Fridays For Future Shiga)
・ディスカッション「CO2ネットゼロ社会を目指して、地域からできること、すべきこと」
コーディネーター ディーガン美佐子(SL2理事)
パネリスト ラウパッハ スミヤ ヨークさん
玉崎蕗さん
中村悠希さん(Fridays For Future Shiga)他
「ご質問への回答」
・フォーラム中に対応できなかった参加者からのご質問に、講師より回答していただきました。
◆ラウパッハ スミヤ ヨークさんへの質問と回答
質問:ドイツでも 現在の系統の近況は厳しいのでしょうか。系統の増強について、事業者と国との負担はどんな感じでしょうか。
回答:現状では、ドイツの系統は安定しています。変動の激しい大量の再エネに十分対応できていると専門家に言われています。問題はこれからです。80%の再エネ比率の技術的な対応は検証されていますが、その投資を短期的に実現することはチャレンジングです。社会的受容性も課題です。
質問:何故、日本では、「地域暖房」が普及しないのでしょうか。
回答:主にふたつの課題があると思います。一つは日本における地域暖房に必要なインフラの構築コストはドイツよりはるかに高いです。もう一つは、日本の住宅ではセントラルヒーティングのシステムがあまり普及していない。一つの部屋に一つの冷暖房の設備があるので、地域暖房につなげる住宅内のシステムがないため、システムへの切り替えコストや段取りは大きな壁です。ドイツの住宅はほとんどセントラルヒーティングになっていますので、重油あるいはガスボイラーを廃止して、地域暖房に繋ぐだけの工事ですので、そんな大きな手間がかかりません。
質問:日本でも今年、労働者協同組合法が施工されて、これを使ってエネルギー協同組合を設立することができるようになります。ドイツのエネルギー協同組合は、近年設立が少なくなっていると聞いていますが、ドイツの地域新電力のメインになっているのはシュタットベルケでしょうか。
回答:ドイツのエネルギー組合が最近停滞している理由はいくつかあります。一つは固定買取システムの変化で太陽光への投資リスクが高くなり、投資改修が難しい。入札制度の導入によってプロジェクトが採択されるかどうか不透明になったため、投資リスクが増えています。さらに組合の経営的な課題もあります。
質問:ラウバッハさんのプレゼンにあった以下3点について知りたいと思いました。
- Common Market Rules とは何か
- fit for 55 政策パッケージとは何か
- taxonomy の対象範囲
回答:質問に関する答えはWikipediaで調べればすぐわかります。common market ruleとは欧州連合の統一市場に関する競争ルールを意味しています。エネルギー市場も統一市場ですので、例えば各国の助成金に規制をかけています。
◆玉崎 蕗さんへの質問と回答
質問:食べ物や土地利用、暮らしと自然、そして気候変動とのつながりについて、日本人は関心がなさ過ぎるということを、この報告から改めて強く感じました。その違い(日本と欧州の人々の感覚の違い)は、何が理由だと思いますか?
回答:ご質問ありがとうございます。私も、自分の肌感覚で感じていることしかお伝えできませんが、一つ大きな違いはメディアだと思います。日本でも、科学者の方々の意見など、気候変動のことが、日常的にもっと報道されるようになれば、市民の意識も大きく変わるのでは、と思います。
質問:玉崎さんの話の中で牛肉を食べると温暖化につながる理由を教えて下さい。
回答:ご質問ありがとうございます。まず、世界全体の温室効果ガスの約14%が畜産業から排出されています。それは、車や飛行機、船などの、運輸に関わる温室効果ガス排出量に匹敵します。
その畜産業から排出される温室効果ガスの多くがメタンです。メタンは、多くが牛のゲップや排泄物から排出され、CO2の28倍の温室効果があります。
他にも、餌を育てるために広大な土地を必要とするため、森林破壊にも繋がります。
私にとっては、交通機関を使わないことよりも、お肉を食べる量を減らすことがまず一番簡単にできることだったので、お肉を減らすという選択をしています。
※参考リンク↓
https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2021/07/05/52110/
【講師プロフィール】
ラウパッハ スミヤ ヨークさん
立命館大学 経営学部 国際経営学科 教授
ドイツ出身。1990年に来日。外資系経営コンサルティング会社、外資系産業機械メーカの役員を務めた後、2000年から滋賀県に本社を置くNECショット株式会社の代表取締役社長に就任。企業人のキャリアを経て2013年4月から立命館大学経営学部教授に赴任。国際経営、国際産業論を担当。世界のエネルギー業界、特に再生可能エネルギーと地域エネルギー事業の分野について研究している。一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク理事。日本板硝子株式会社社外取締役。
玉崎 蕗さん
Fridays For Future Shiga
高校卒業後、教科書以外にも学ぶべきことはあるはずと欧州に渡る。現地でアルバイトやボランティアをしながらフランス、ドイツ、モロッコなど地中海周辺の国々を旅する中、気候変動に声を上げる何万人もの若者を目にし、問題の重大さを知る。帰国後Fridays For Future Shigaに参加して気候変動対策を求め活動中。また、日野町でフリースクールの開設、運営にも携わっている。
ディーガン美佐子
しがローカルSDGs研究会 理事
SL2理事として気候変動対策に向けた活動の企画運営に関わる他、FEC自給圏ネットワーク世話人代表も務め、食・エネルギー・ケアの自給自足、地域循環を目指す。地域の自立に繋がるFECの自給を気候変動対策と並行に進めることを提案し活動中。また、通訳・ツアーコーディネーターとして湖西地域を中心に持続可能な暮らしの大切さを紹介している。滋賀県立大学「近江環人」21期生。
しがローカルSDGs研究会 事務局
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